Rudwick 2005 BLT 3.5
ナチュラルヒストリーの歴史研究会
Rudwick 2005 Bursting the Limits of Time
3.5 The Standard Model of Falling Sea Levels 海面下降の標準モデル
The multiplicity of geotheories 地球理論の多様性
この章でとりあげた3つの地球理論のほかにも多くの理論が提案された。定常や循環(Hutton、前期Buffon)か、一方向(後期Buffon、de Luc)か。多くは後者。
ほかの地球理論でもっとも特徴的なのは海面下降である。これが地球の時間的展開の〈標準モデル〉と称され、賛否はともかく地質理論に関わるすべての学者が参照するものだった。
標準モデルのなかでは一方向的という点では共通しているが、海面変化の速さやようすなどについては合意はない。水が減少する理由についても、地下の空洞や蒸発、彗星などが唱えられた。
最初期の地球は全体が化学組成の流体でおおわれており、そこからさまざまな物質が沈澱していったと考えられていた。これはしばしば「水成論」と呼ばれている。
Neptunist geotheory 水成論的地球理論
Werner (1749-1817)は単に自分なりに表現しただけである。当時の一般的な意見に対抗したのは、玄武岩が水成の沈澱物として生成したという主張だけである。
18世紀に入るころのJohn Woodward(原始スープをノアの洪水と同一視したが、18世紀中盤には短い時間では無理だと考えられるようになった)。
水成論によって時間的な2つの重要な経験的予測がなされた。〈標高基準〉と〈石質基準〉である。
この種の地球理論で影響力をもったひとつは、Pallas (1741-1811)の1778年の論文である。
ほかの場所での地殻上昇を認めていたものの、ほとんどは一般的な海面下降の説明だった。
その上に木の幹や動物の骨などの「三次」third orderの堆積があり、それらは洪水などに帰せられる。
Linnaeus (1707-1778)は標準モデルを動植物の分布に用いた。はじめの陸地で生まれた陸上生物が広がった。
Celsius (1701-1744)はバルト海の海面は下がりつづけていると主張した。
Conclusion 結論
地球理論の標準モデルは、地球の主要な特徴の多くについてある程度満足のいく因果的説明を与えた。地球の起源については触れていなかったが、水成論的地球理論は筋の通った説明(地球は一度きりの異なる段階を経てきた)を提供した。
理論化の野心は地球理論に緊張を与えた。経験的制約がほとんどなくどんな仮説的モデルも同程度のもっともらしさだった。
ソシュールや若い世代は経験的証拠の不足を自覚しており、地球理論の提示を何度も先送りにした。では、どのような経験的証拠が包括的地球理論の成立に寄与したのか(5章)。その前に、第4章ではその背景としてつきまとう問題をとりあげる。それは、地球理論やその基盤となる科学が十分に〈歴史的〉でなかったと主張するのは、どのような意味で、どの程度まで、正当なのかどうか、というものである。
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